title:オヤジからのキラーパス

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Feeded by morning star
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今から20年以上も前のことである。当時、俺は銀座のとある会社で働いていた。就職してまだ2年目。社会の右も左も分からぬ青二才であった。そんな小生意気なだけの若造に、男の生き方を叩き込んでやろうと思ったのか、はたまた酒の席で笑い者にしてやろうという魂胆でもあったのか、どういうわけか毎晩のように諸先輩が夜の街へ連れ出してくれた。そのころは、聴くもの、見るもの、食べるもの、呑むもの、すべてが新鮮で、俺は精一杯背伸びしながら先輩たちの世界に食らいついていった。

そんな俺が先輩に連れて行ってもらうのを楽しみにしていた店がいくつかあった。オーセンティックな雰囲気漂う、銀座を代表するとある名門バーもそんな店のひとつだった。そこは、まともなカクテルなど口にしたこともない俺でもその秀逸さが分かるほど、素晴らしいカクテルを飲ませてくれる店だった。ギムレットはそれまでに呑んだギムレットとはまったくの別物だった。ドライ・マティーニの「切れ」とはこういうものかとかと教えてくれたのもその店だった。サントリー・オールドのただの水割りに驚愕させられたこともあった。そのまろやかさといい、香りといい、とてもオールドでつくったとは信じられなかった。水割りもカクテルであり、作り手によってこんなに味が変わるものなのだとつくづく感心させられたのを覚えている。

珍しく早めに仕事が終わったある日、俺と先輩はその店で呑んでいた。ちょうど今頃の季節だったろうか、外はまだ明るかった。そんな時間にその店を訪れるのは初めてのことだった。そこへ会社の上司S氏が入ってきたのである。彼は俺たちの姿を認めると「おう、君たちも来てたか」とでもいうように、片手を挙げて挨拶をし、少し離れたカウンターにとまった。さすがである。オーダーから、佇まいまで、その所作がしっくりと空気になじんでいる。思いっきり店の雰囲気から浮いている若造の俺とは大違いであった。

ママに聞くと、彼はほとんど毎日のようにそのぐらいの時間に店に顔を見せ、カクテルを口にしながら、気持ちがオンからオフへと切り替わる時間をゆっくりと楽しんでから、夜の銀座の街へと消えていくのだという。かっこよすぎる。その店には、そういうお客さんが結構多いらしい。どうりで、帰っていく客へのママの見送りの声は「いってらっしゃいませ」であった。

その日何杯目かのカクテルを呑んでいるときだった。「いってらっしゃいませ」との声に出口を見やると、Sさんがママに見送られながら颯爽と街へ繰り出すところであった。外はうっすらと夜の気配を漂わせ始めていた。ダラダラと呑んでいる自分たちを無粋に感じたのは先輩も同じだったのか、二人は残っているカクテルを一気に空け、店を出ることにした。そしてお勘定を頼もうとしたそのときである。「Sさんから、いただいていますよ」。やられたぁ…。お礼を言う時間も与えず銀座の街に消えていったSさん。カッコよすぎる。

その店で酒を呑むには、俺はあまりに若造過ぎた。この店は俺にはまだ早い、自分はまだこの店に似合う酒呑みではない、と痛感させられた。あれから20年以上たつが、まだあの店に似合う酒呑みには、なれていないような気がする。



Feeded by morning star
【2006/05/12 19:29 】 Drinking | コメント(2) | トラックバック(0) |

銀座のバー。
恐らく私にはこれからもご縁の無いところでしょうけれど
時々テレビで見る銀座のママさんは
やはり一流の気品風格があって
世の男性はああいう所で飲みたいな、って思うんでしょうね。
お酒は二の次だったりして。(笑)

Returned by ともちゃん #-|URL|
【2006/05/14 15:05】[ 編集 ]

ともちゃんへ

>時々テレビで見る銀座のママさんは
>やはり一流の気品風格があって
>世の男性はああいう所で飲みたいな、って思うんでしょうね。

それはクラブの世界ですね。
私にとって銀座のクラブなど、夢のまた夢。
場違いもいいところです。
高級クラブなんて気後れしてしまって、
とてもお酒を楽しむ気分になれません。

そのバーは、ボックス席が2つある以外は、カウンターのみ。
しかもカウンターにはスツールもないので立ち飲み状態ですが、
もちろん今はやりの立ち飲みバーとは趣が大きく異なります。
ふらりと店に現れて、カウンターでさっと1,2杯楽しんで、
すっと消えていくのが似合うようなお店です。
あの店のカウンターで立ったまま
グラスを傾ける様子が様になるには、
それなりの年季が必要なのかもしれません。


Returned by morning star #VizADBpE|URL|
【2006/05/15 11:14】[ 編集 ]












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