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title:オヤジからのキラーパス

残暑が続いている。とはいえ、朝夕の空気からはかつての狂気が消えつつある。秋の気配が感じられる。長かった夏もそろそろその終わりを迎えようとしている。

雑誌『ニューヨーカー』の代表的な書き手だったアーウィン・ショウの作品に『夏服を着た女たち』という短編がある。登場するのは、休日のニューヨーク五番街を散歩する中年夫婦。そして、夏服を着た女たち。休日の過ごし方をあれこれ提案する妻の言葉にも上の空で、街行く女性に気を取られる夫。彼の眼はつい夏服を着た女たちを追う。そんな二人のやり取りが、名手ショウならではの洒脱な筆致で綴られる。常盤新平さんの名訳もこの作品の魅力にひと役かっていると思われる。

あらすじだけを読むと、そんな好奇の眼に自分の姿を晒したくないと感じる女性も多いだろう。自分のパートナーが同じような行動を取ったら許せないと思う女性もいるだろう。しかし、実際にこの小説を読めば、むしろこんなふうに男性から見てもらいたいと思うのではないだろうか。こんなふうに女性を見つめる男性の眼を好ましく感じるのではないだろうか。そう、大人の女性ならば。

都会の風景のひとつとして、いきいきと街を彩る女たち。主人公は綺麗な花を見て綺麗と感じるのと同じように、彼女たちの姿を追い、その美しさに素直に心を奪われる。ラストがまた秀逸である。これぞ、アーウィン・ショウの真骨頂。この一篇を見事に女性の美に対する礼賛へと昇華させている。

街に夏服を着た女性がちらほらと見られるようになるころ。俺は夏の到来を実感すると同時に、この小編を思い出す。そして、この夏、俺の眼も主人公と同じように、何人もの夏服を着た女たちの姿を追いかけた。夏服を着た女たちが見られるのも、あと残りわずかである。

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Feeded by morning star
【2006/09/05 17:13 】 Woman | コメント(8) | トラックバック(0) |