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title:オヤジからのキラーパス

今朝の通勤電車の中でのこと。俺は、いつものように堅気の人たちが「痛勤」を終えたあとのすいている電車に乗り込み、いつものように本を広げていた。何ページか読み進んだところで、活字を追う視線の端に何か異様なものを認識した。本から顔を上げてその方向を見やると、斜め向かいのシートに異様な「物体」があった。

そこにあったのは、一人の中学生(と思われる)だった。肘を太腿につき、カラダを前のめりにし、顎を前に突き出して周りを見るともなく眺めている。その視線には、己の生の役割をほとんど終えてしまった老人が他者の人生を傍観しているような、生への無関心さが宿っていた。カラダを支えるありとあらゆる筋肉が退化してしまったのではないかと思われるような脱力感を漂わせ、電車の揺れに身をゆだねる少年。生き物としての存在感の希薄さが、かえって異様な存在感を放っている。

何なんだ、これは…。中学生といえば、未成熟なカラダのうちに収まり切らないほどの生と性を漲らしているものではないのか。おまえは飯を腹いっぱい食ったことがあるのか。大声を出したことはあるのか。誰かを殴りつけたいという衝動に駆られたことはないのか。大切な何かを失って、夜通し涙したことはないのか。美しいものに、魂を震わせたことはないのか。ギシギシと音を立てて軋むような他者との関わりの中に身を晒したことはないのか。射精できるのか。そもそも勃起するのか。行き場のない性欲の暴走に、戸惑うこともないのか。この世に生を受けておきながら、これほどまでに生の実態や生への執着を感じさせない存在があろうとは…。

いつの日か彼が、生き物として、生身の人間として、覚醒することがあるのだろうか。俺は、眼前の少年の姿に薄ら寒いものを感じていた。そして、怖いものから眼をそらすように、再び活字の世界へと戻って行った。リリー・フランキー著『東京タワー』。そこには、手触りと体温の感じられる剥き出しの人間味があった。



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Feeded by morning star
【2006/09/01 16:08 】 Diary | コメント(6) | トラックバック(0) |