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title:オヤジからのキラーパス

夜も10時を回ったころだった。子供はそろそろ寝る時間という頃になって、息子が言い出した。「宿題やるの、忘れてた…」またかよぉ。最近多すぎないか、そういうの。さんざん遊んで、テレビも見て。やらなければいけないことを後回しにしているうちにやるのを忘れるなんて、キミの父親そっくりじゃないか。とっととやれ!

宿題は、作文。息子曰く、「最近見たり聞いたりしたことを題材に、自分なりに考えたこと、思ったことを書いてくること」がテーマなのだそうだが、作文ってそもそもそういうものであって、テーマになっていないような気がしないわけでもないのだが…。

息子が取り上げたのは、テレビで見たアフリカの子供たちの話。途中まで書いてあって、あとは自分なりの考えを書けば一丁上がり!というところまで出来上がっていると言う。どれどれ。「アフリカには貧しくて、勉強したくてもできない子がいる」…と。なるほど、キミもそんな番組見るんだな。「ときどき勉強なんかしたくないと思うことがあるけれど、彼らに比べたらぼくはとても恵まれている」…か。ま、キミの場合、勉強を渋るのは「ときどき」ではないけれどな。「もっと、しっかり勉強して、鉛筆や消しゴムも大切に使わなければいけない」…ふむふむ。キミの鉛筆や消しゴムには莫大な金を費やしてきたからね。

どうやらそこから先が書けずに、ついに期日が来てしまったということらしい。このまま終わりにしてもいいような気もするのだが、息子は最後に何を書きたいのか。「これでは僕が思ったことだけで、考えたことが書けてないもの」うん?考えって…。つまり、貧しい彼らのためにキミが何をすべきか、とかそういうことか?どうやら、そうらしい。そいつは、難しいだろう…。世界が抱える貧困という問題の前では、小学生のキミはあまりにちっぽけな存在だ。

それからかなりの時間、彼は彼なりの答えを見つけるために必死に格闘していた。しまいには、組み合っている相手の大きさに、困惑し、途方にくれ、泣き出す始末。見ると、時計の針はとっくに12時を過ぎていた。

作文上手な胸糞の悪いガキなら、「鉛筆の1本でもいい、消しゴムの1個でもいい。彼らのために、ぼくにできることをしてあげようと思います」とか、「みんなが豊かに暮らせるよう、一生懸命勉強して、世の中の役に立つ人間になりたいと思います」というような大人に媚びるような言葉で締めくくるのだろう。しかし、息子はそんな言葉では納得できないと言う。そりゃ、そうだろう。それは偽善的で、尊大で、傲慢な模範解答であって、思索という格闘を経て心の底から搾り出してきた言葉ではないのだから。真剣に考えれば考えるほど、そんな借りてきたような見せ掛けの言葉ではしっくり来ないと感じるのも無理はない。

結局、これだという答えに辿り着けないまま彼が渋々書いたのは、「恵まれているぼくたちは、勉強ができることや、物に不自由することなく暮らせることにもっと感謝しなければいけないと思います」といった意味の文章だった。必死で考えた割には、ありがちな締めになったけれど、言葉なんてどうでもいい。そこに辿り着くまでの過程で、彼は彼なりに必死に思索した。そして、真剣に考えれば考えるほど、自分ひとりでは何もできないということを思い知らされたに違いない。それが大事だよ。自分の身に余るほどのテーマと真摯に対峙し、格闘したこと自体に意味があると思うよ。

「さあ、歯を磨いて、早く寝なさい」「まだ、漢字の書き取りの宿題が…」

お…、おどりゃぁー!!!

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Feeded by morning star
【2006/05/19 15:13 】 Kids & Kids' Football | コメント(5) | トラックバック(0) |